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講師へのインタビュー〜その1〜

2018年12月8日 

日本ユニバーサルボッチャ連盟理事渡辺美佐子先生インタビュー

地域にボッチャを普及するには? 自主的に運営する人材・ボランティア・場所

 

地域の公的施設。閉じられた場所ではなく---体験的な講習会後も、参加者が継続して練習できるのに必要なものは自主的に運営できる人材、ボランティアそして場所です。場所は、障害者専用ではなく、なるべく一般の方も覗ける所がいい。通りを行く人の目にとまり、興味を引くようなところです。私が関わった例で紹介するとI市の福祉センターでの定期的練習会があります。冷暖房付きの体育館が福祉センターに併設され、こけら落としとして車椅子バスケのデモンストレーションが行われました。しかしその後の障害者の利用者が少なく、市から障害者向けのスポーツプログラムを依頼されたのです。私は(対象となる障害の方は比較的障害が軽かったので)1年は引き受けるが、翌年からは、自主的に参加者たちが運営するという条件を出しました。

 

毎週同じ曜日、同じ時間---障害者の人たちが来やすくするには、なるべく、毎週同じ場所、同じ曜日、時間を設定します。毎回条件が違うと連絡が大変ですし、障害者の場合、1回来れないと、続けられなくなる人もいるためです。重度の障害の人は最初は来て、寝転がっているだけでもいい、といったゆるい体制で、その横でボッチャをやっているという感じでした。最初は他の利用者のグループから、少人数の人たちが場所を毎回占有しているとクレームが出たりしましたが、行政の方の協力で、場所と時間を固定できました。そうするうちに、保健センターやお風呂にはいりにくる地域の方々が、興味を持ち、ボランティアしたい、あるいはいっしょにプレイしたいなど、申し出てくれるようになりました。ボランティアも含め最終的に2時間の枠に50名ちかくが集まることになりました。そしてその1年の間に、障害のある人たちも自主的にクラブ運営ができるよう指導しました。

 

ですから場所選びは、「障害者の参加しやすい場所」という条件にこだわり過ぎず、地域の人も来やすい公共の場の方が選択肢が広がるし、ボランティアも探しやすいです。今は、公民館であれ、会議室であれ、バリアフリー化もすすみ、工夫すれば、練習会場にできるはずです。

 

人材育て---始めの出会いは、声かけ、スキンシップ まず、障害の人に出会って、話し相手になってもらいます。ボランティアである限りは、何かやってあげなくてはいけないと必死になり過ぎると、かえって続きません。障害者との最初の出会いはただいっしょにいるだけでいいと思います。その場でやって欲しいことは現場の責任者が適宜伝えればいいのです。大学で教えていた頃、学生たちに手伝ってもらったのですが、「何かやってあげなきゃ」という気持ちが強すぎると過剰に障害者に話しかけたりして、続かない。そこで、学生たちに「話し相手でいてあげて、友達としてそこにいて」、と呼びかけたところボランティアとして活動を始めました。その頃学生だった人たちの多くは、現在公務員となり、地域のボッチャ支える人材になっています。

 

重度心身障害者にとってのスポーツ  風・音を変える、声をかけてもらう

今回は、重度の障害を持つ参加者も多かったですが、重度の人というだけで、出会ったことのない人は、引いてしまうところがあります。私自身そうだったのですが、まずは、私たちが、通りすぎるときに、軽くタッチして重度の障害の方に声をかける、挨拶をする(スキンシップをする)というところから入りました。 私の考える重度の人のスポーツレクリエーションとは、まず、スポーツする場所に出かけていくことで、普段と違う音、風を感じる---普段と違うことを感じるところが大切ではないかと思います。そこから発展して、ボッチャであれば、ボールの重さを感じたり、周りの声援や声かけが聞こえてきたりというのも彼らにとってのスポーツだと思います。それによって気持ちや体が動いたりと反応が出てきます。

 

準備運動の大切さ、意味

大きな風船を使ってのキャッチボール、ポールを使って手を上にあげる、ボッチャのボールを持って手をあげたり、体にタッチさせて、回したり。今回ボッチャの実際のプレイ前に行ったウォーミングアップでは、ボールを持つと不思議と普段あまり挙げられない手が上がったり、ボールを体で転がすところで、閉じていた手が開いたりと、周りも実感されたと思います。来ていきなりボッチャのゲームをする人がいますが、あまりお勧めしません。

準備運動に使っているのは特殊な道具はなく、パイプや、ボッチャボール、大きな風船など、日常的に手にはいるものばかりです。指導、声かけも難しい技術は必要ないのです。ボッチャ一歩前のこのあたりの練習を、日常の健康贈進に役だててほしいです。そして指導側としては準備体操は、参加者の状態をチェックする意味もありますね。高齢者などは、一見したところ、もう動けないと思う人が準備運動で動かしてみると意外と動ける場合が多いのです。

 

ボッチャの国際試合の最前線では・・・最近の国際大会の審判での体験

支える側のあり方が印象的でした。とにかくプレーヤーの意思を汲み取るのに介助する側がすごく集中している。いかに、正確にプレーヤーの指示を読み取るか。余計なことは一切しない。プレーヤーの決断が最優先されていました。それは審判に対しても同じで、なるべく喋らない、というのを徹底して言われました。ボッチャという競技言語を通じて語るので、余計な言葉はいらないということです。介助者の介助の質が問われていました。

 

今回の参加者に対して一言お願いします。

(続けてきている)障害を持つ参加者たちの表情が回を重ねるごとにどんどん明るくなっていくのが嬉しかったです。自分は何ができるのか、、ということではなく「自分はできるんだ!」という発信が表情に出ていました。日本のボッチャの公式試合では実は重い方たちのBC3というクラスの人たちが、自立度が一番高いんです。生まれつきの脳性麻痺で重い障害の人たちは、人生で100%自分の意思を表出する、決断するという経験を持たずにきている人が多い。そういう方たちが、ボッチャを通じて、決断をする経験を積み、実際の生活でも自立に目覚める機会にもなっています。